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発作的タイ旅行記【9】

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■子牛横流し業者。

件のトゥクトゥクは軽快な音を立てて車を縫い、僕のはやる気持ちを運んでゆく。
なんだか日本で自分が初めて試合に出た時にも似た、妙に浮き立った気持ちなのである。
「あんまり興奮するとアホみたいだよな」と大人の分別を働かせ、ドナドナなど鼻歌で歌っていると、ふいにそれまで大通りを飛ばしていたのが横道に逸れ、なんだかじめっとした小道へ。
「あれ、さっきの通りをまっすぐ行って、交差点を曲がるだけじゃなかったけ?」と一瞬思ったが、まあそこはプロドライバー、抜け道でも知っているのだろう。ジャの道は蛇である。だいいち俺、いまドナドナで忙しいし。
トゥクトゥクは何度も細い路地を曲がりながら、次第に人気のない通りへ向かってゆく。
「ん?」と言う妙な合いの手が鼻歌に混じり始めた頃になって、いきなりちょっと広めの通りに出た。観光客もちらほら歩いているようで、どうやら抜け道説が証明されたようである。鼻歌が最後のワンコーラスにさしかかったところで、キッと音を立ててトゥクトゥクが停まった。
「着いたよ」
停まった路地を眺めると、そこには写真で見たラジャダムナンとは似ても似つかない構えの建物。小さな入り口の上にくすんだような青と赤のネオンが輝いている。
「…ここどこ?」
「いやー、ラジャダムナンじゃないんだけどさ、すげえキックのショーが見られるし、こっちのほうがずっと安いよ。酒もいっぱいあるし」
運転手は親切そうな笑顔を浮かべて説明する。
いやいやいやいや。ここって、ショウバーじゃん?明らかに。
「いや、俺、ラジャダムナンに行きたいんですけど」
とたんに運転手の顔、曇る。というか、すでにぽつぽつ来てる。
おそらくは客の紹介で、いくばくかのマージンをせしめているのだろう。
あほか、死ね、という意味のメッセージを当たりさわりない言葉で伝える。
「じゃ、ここから別料金で運んでやるよ」
「あ?」
ここからはもう、お互いそれほど美しくない英語でのやりとりである。
「約束と違う」と言う僕の主張にどうしても折れようとしない運転手。フラストレーションは限界に達しつつあった。ってか、急がないと試合始まっちゃうじゃん。
「じゃ、もういいよ。ここまでの料金払え」
運転手が言った瞬間、ここまでおとなしく運ばれてきた子牛(推定年齢32歳)が嘶いた。
「おい、降りろ、てめえ!」
聞き慣れない日本語の怒声に、通りを行き交う白人観光客がぎょっとした顔でこちらを振り返る。
…その後、いろいろあったが、結局ほぼ正規料金に近い額でラジャダムナンまで運ばせる。
無愛想に差し出した紙幣をひったくるようにして去ってゆくトゥクトゥクにきっぱりと中指を立てた後で振り返ると、そこにはあの伝説のスタジアムが。
またもや観光客がきょとんとした顔でこちらを見ている。
なに見てんだ、おら。

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■聖地

ラジャダムナンの外国人向けリングサイド席は確かにかなり高くて、サメット島でのダイビングに次ぐ出費だったけれど、それも大して気にならない。蓮のうてなに値段なんてないのである。
案内員の誘導する席に着いてビールを飲みながら試合が始まるのを待つが、客席はまだまばらである。それでも会場の雰囲気と生演奏のタイ音楽、選手が体に塗るオイルの香りに飲み込まれて、ぼーっとしているうちに午後7時過ぎ、第一試合開始。
選手は104パウンドというまだあどけない少年で、顔は緊張に引きつって見える。ワイクルー(試合前の踊り)だって、まだぎこちない。
試合は膝中心で5ラウンドを闘い、赤コーナーの勝利。
両者に拍手を送っていると、隣に40代ぐらいの品のよい白人夫婦がやって来て、案内員にビールなどを注文している。
次の試合を待つ間、僕がトイレに行ったついでにスタンドでビールを買って戻ってくると、「君、それいくらだった?」とダンナの方が訊く。返答を返すと、「そうかー、スタンドで買った方がちょっと安いんだなあ」となどと大げさに残念そうな表情を見せ、「あらあら」みたいな感じで奥さんが笑う。
その後も大はしゃぎで写真を撮ったり、選手に腕を振り上げて声援を送ったり、とにかく仲がよく陽気な夫妻なのである。
こういう旅行も楽しいんだろうな、などとふと思う。

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■人が増えて、⇒賭けが始まる。

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■束の間の休息。

第三試合、このあたりから会場の雰囲気は徐々にヒートアップしてくる。
二階席では徐々に集まり始めた博徒たちが腕を振り上げて賭け始め、ラウンドの合間に怒声が飛び交う。生演奏の音楽がそれを煽り、巨大なグルーヴを形成する。まるでライヴハウスなのである。
試合はまだ10代らしい選手同士の闘いで、4ラウンド終盤に決定的なキックが決まる。観客席からどよめきがあがるが、青コーナーの選手は何とか持ちこたえた。
金がかかっているだけに観客も真剣で、選手はすごいプレッシャーなんだろうなあ、などと考えているうちに5ラウンド開始。
明らかに優勢に立っている赤コーナーの選手が打たない。立っているのもやっとという感じの青コーナーの選手が、負傷した脚を引きずってひょこひょこと後退するのにあわせて、威嚇のような軽いジャブを繰り出すだけである。
日本なら「何やってんだ、倒せ!殺せ!」的な野次が飛び交ってもおかしくない状況なのだけれど、二階に陣取る博徒たちも心なしかしんとして、このラウンドが無事に終わるのを待っているようなのである。
いやあ、ぐっときましたね。
みんなK.O.が見たい訳じゃないのだ。一生懸命闘っている選手達がいて、その勝負に白黒がつけば、あとは最後まで選手をリングに立たせてやろうという暗黙の了解が出来上がっているのである。
歳若い選手ということもあったのだろうし、そもそも僕はこの会場の賭けのルールというものを知らない。もはや賭けに白黒ついた試合自体が意味を失ったのかもしれない。1ラウンド逃げ回るだけの立場の選手だって辛かっただろう。
でも、試合が終わると、賭金やら個人的な思い入れやらを差し置いて、最後まで立ち尽くした選手二人に、会場全体が惜しみない拍手を送っている。地鳴りのような歓声が会場を満たす。
それは掛値なしの賞賛であって、勝ち負けを越えたねぎらいのコトバなのである。
不覚にも、何だかちょっと胸が熱くなるような光景であった。

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■おつかれ気味。⇒超満員。

試合が進み、時刻はもう11時近いのだけれど、会場の熱上昇はとどまるところを知らない。
1試合約30分。入り口で渡された対戦表によると、本日の試合は10試合あり、合計で5時間ほどになる。
選手も大変だろうけど、観客だってこれはちょっとした闘いである。
第7試合以降のメインイベントが始まる頃には、ずっと生演奏を続けているフォーピース・バンドもかなり疲労している様子で、悪いとは知りつつも、その憔悴した感じに思わず吹き出してしまう。
メインの数試合はやはりさすがの貫禄で、選手も堂々としてワイクルーも美しい。
びしばしと肘や膝、ハイキックが決まり、その度に会場は「ァイーウィー」というような独特の歓声に満たされる。
ここぞという場面で、思わず選手に合わせて脚やら腕やらを突き出してしまい、それがとなりのダンナにぶつかると、ダンナのほうもビールを手にしたまま片手を突き上げている。
お互い苦笑しながら、目配せしあう。
男とは、ことほど左様にアホである。

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■サンキュー、ラジャ。⇒夜の民主記念塔。

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■お夜食。

全試合が終了したのは0時過ぎのことで、外に出るとそこには客待ちのタクシーと屋台のパレード。
会場の熱気にあてられた体を冷ますべく、のんびりと歩いてホテルに向かう。
夜の民主記念塔が美しく輝いている。
一日の長さに疲れ果ててカオサンに戻り、またもや匂いに誘われて屋台へ。
汁っぽい惣菜のかけられたごはんの酸味と甘み、辛味が全身に浸み込むように押し寄せてくる。
そういえば、はじめて試合に出た後、減量の禁を破って食ったタイ料理もこんな味だったっけ。
なんだか苦いような味がするのは、皿に盛られたチキンがちょっと焦げていたからだけではない。
先ほどラジャダムナンで充填されたアドレナリンが、舌先でピリピリしている。
もう一度言う。
男とは、ことほど左様にアホである。
【続く】

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