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すれ違い問題、再燃。

それまで全く気にもしていなかったことが、ふとしたきっかけで頭に焼きついて離れなくなることがある。
そういうものは大体の場合、人生につまらぬ制約を増やすだけなので、できることなら避けて通りたいのだけれど、残念なことに枷は年齢と共に増えていく傾向にあるようだ。
「霊柩車が来たら親指を隠す」、「勝負の日はかつ丼を食う」、「でも、毎日食うと飽きる」など世間一般に流布するジンクスはその最たる例だけれど、それ以外にも自分の行動様式には「ある日を境にそうせざるを得なくなった」みたいなものが多々あって、考えるだにやっかいである。
こういう些細な規範に縛られて暮らしていると、時々自分が自らの意志で行動してるのかどうかさえ、怪しく思えてくる。
自分は単なる条件反射を詰め込んだ、ずた袋なのではないかと。

もうだいぶ昔のことだけれど、ラジオだったかテレビだったかで、「狭い通路で男性が他人とすれ違う場合、相手が男性だと背を向けてすれ違うが、相手が女性の場合、体を相手の方に向けてすれ違う確率が高い」という統計結果について話していた。
まったく、ろくでもない統計である。そんなものを統計していったい誰の得になるというのか。もっと真面目にやれ。
しかし、それを聞いた若き日の自分は、なんとはなしに恥じ入ってしまった。そして「やっべえ」と思った。
これまで異性とすれ違う時に、ことさら意識して相手の方に体を向けたことはないが、そうして指摘されて見ると確かにそのような振る舞いをしていたような気がしないでもない。今考えると別にそんなことはなかったと思うのだけれど、その時は突如降って湧いた指摘に狼狽してしまったのだ。
その統計によると、女性は相手の性別によらず背を向ける確率が高いのだそうで、それではまるで嫌がって背を向ける女性に対して、男性が本能丸出しで迫っているようにも聞こえる。その様子を頭に思い浮かべてみると、自分の姿はまるで猿。まるで変態ではないか。やっべえ。
その日からわたくしは、通路の向こうから女性が歩いてきたとみると、自分がどんな態勢にあろうとも、必ず相手に背を向けてすれ違うようになった。
最初のうちは、あっ、と思ってからあたふたと背を向けるので、相手に体を向ける以上に不審極まりない動きだったに違いないが、数ヵ月経つ頃には、ほぼ無意識のうちに相手にしゅっと背を向けることができるようになった。
ある日そのことに気づいた時には、なんというか、ちょっと誇らしい気持ちになった。もはやわたくしは猿でもない。変態でもない。統計結果の指すものが男性の根源的欲求に対する愚直なまでのストレートさだとすれば、それを理性のコントロール下に置いたわたくしは真人間、本物の紳士。ふうん、紳士、なかなかいい響きだねえ。なんつって、紳士らしくレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなど鼻歌で歌いながら、事あるごとにしゅっとした身のこなしで女性とすれ違っていたのである。しゅって。

しかし、それから数年も経ったある日のことである。
その日、わたくしは携帯を眺めながら狭い通路を歩いていて、向こうから歩いてくる女性の発見が遅れた。気付いた時には、女性はもうすぐ目の前。でも紳士たるわたくしは慌てない。いつものように慣れた身のこなしで女性に背を向けてこれをやりすごしたのである。
だが、すれ違う直前、わたくしの目に飛び込んできたのは、女性のあからさまに不快そうな表情。
「なんですの、この紳士」というか、どちらかというと「なんだこのくそたわけ」みたいな感じであった。すっごい迷惑、みたいな。
自分は自分の目を疑った。そして若干の怒りと不安を押し殺しながら、気のせいだ、と思った。というか、思おうとした。
でもだめだった。数日間に及ぶフィールドワークの結果、不安は現実のものとなった。どうやらわたくしの紳士的行為は、相手にとって非常に迷惑らしいのである。
それまでの数年間、優雅に紳士ライフを楽しんできたわたくしは千々に心を乱された。
どういうことだ、約束が違うじゃないか。紳士になれるって言ったじゃないか。まあ、そんなことは誰も言ってないが、それにしても何かが間違っていたというのか?あの統計が嘘だったとか?
それからわたくしは三日三晩寝ずに考え抜き、明け方の薄闇の中で、あっ、と思った。
あっと思ったというのは、つまりこういうことである。
狭い通路で背を向けて人とすれ違う場合、わたくしはすれ違う直前に相手側の肩を前に振り出さなければならないのであるが、相手からしてみれば、その行動は「自分に対して暴力的に肩を振り出してくる狂人」と映らなくもない。見ず知らずの人がすれ違いざま、自分に向って勢いよく肩を振り出してきたら、そりゃ不快だろう。なるほどなるほど。狂人かあ。こりゃ一本取られましたな。ってか、気付くの遅いよねえ。はは。
と納得している場合ではない。
わたくしは相手の方に肩を振り出さず、なおかつ背を向けてすれ違う方法を探して、部屋の中で様々な角度に肩を振り出しながら、くるくるとまわった。踊るように、歌うように。
しかし、当然ながらそんな方法が見つかるわけもなく、わたくしは今、深い混迷の中にいる。
狭い通路で向こうから女性が迫ってくる中、肩を振り出して背を向ける狂人にも、軽薄に体を向ける猿にもなれず、木偶の坊のように立ち尽くしている。
狭い通路の真ん中で。
脂汗を流して。
ピース。

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