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『三平ストア(弁当)』

高円寺で今、一つの戦争が起こっている。
『高円寺300円弁当戦争』である。
ご存じない方も多いと思うけれど、これは主に休日の昼時、わたくしの頭の中で起こっている戦争なので、知らない人は多分まあ正常と言えるのではないかと思う。知ってる人は、ちょっと電波さんてことでOK?
で、『高円寺300円弁当戦争』が何かという話なのだけれど、この高円寺という土地は元々、ガード下を本拠地とする『ロンちゃん弁当』によって平和に統治されていた(妄想モード全開)。
そこに住む我々高円寺の民は、「あー、バイトだりぃ」かなんか言いながら、日々ロンちゃん帝国より300円台で供される弁当を食べて、のんびりと暮らしていたのである。
この平穏な日々は永遠に続くかに思われた。
が、この決して肥沃とは言えない廉価弁当の大地に、数年前から中華料理店列強が参戦し始めたのである。
折しも東国で、リーマンなんたらいうサラリーマンの蔑称みたいな名前の会社が倒産し、そのとばっちりが津波のように、ロンちゃんの治めるこの高円寺にも押し寄せてきた頃であった。
そんな波乱の時代に300円台の廉価弁当界に打って出た「福来門」「明月房」「成都」など新規参入連合の知的戦略は、確かに卓抜していたと言ってよい。
これまで昼時になると、「ちょっ、弦切れたけどフロイドローズのチューニングとかマジめんどい。練習中止して飯にすっか」などと言ってロンちゃんに駆けつけていた高円寺の民たちは、南北に散在する新規参入連合の新たな選択肢によって散り散りになり、ロンちゃん帝国の統治力は急速に弱体化して行ったのである。
もはや高円寺の昼食弁当選択において、「今日も、ま、ロンちゃんでいっか」というような牧歌的風景は見られなくなってしまった。
あそこがよい、ここが美味い。
高円寺は、そういった風評に踊らされたピープルが弁当を求めて日夜徘徊する、ゴーストタウンの様相を呈する様になってしまったのである。

そんな暗黒の300円弁当戦争只中の高円寺に、妙な噂が立ったのはつい先日のことである。
どうやら300円戦争の救世主が降り立ったらしい。そいつには胸に3つの傷があるらしい。預言者は無言のままルック商店街を指さしたらしい。
そういったまことしやかな噂が、荒みきったストリートの路傍を駆け抜けた。
「またあ」と、その話を聞いたわたくしは思った。「北斗の拳の読み過ぎちゃうん?」と。
しかし、噂の勢力は日を追うごとに増し、それに伴って自称弁当探究者達は危険もかえりみず、ルック商店街になだれ込んで来るようになった。
そんな光景を長屋の二階から禁煙パイポをくわえて眺めていたわたくしは思った。
「おもしれえ。そんなに言うんなら、いっちょ命懸けで見に行ってやろうじゃねえか。その救世主とやらを」と。「ちょうどお昼だし。ティッシュとかも買いたいし」と。
そんな決死の覚悟で霧雨の降りしきるルック商店街に船を漕ぎ出したわたくしは幾多の危機を潜り抜け、山間の茶屋『コーヒーアンプ』で美味しいコーヒーをいただいたりしながら、ようやっと伝説の救世主が立つという「三平ストア」へ辿りついたのである。
そうして、そこでわたくしが目にしたものは、予想外の重量感、パッケージに封印された夥しいおかずの軍勢、そしてあわや300円台を飛び出すかと思わせておきながら399円と言う限界から1円だけ余裕を持たせる奇抜な価格戦略。
その傲然たる威容を眺めたわたくしが即座に思い浮かべた言葉は「救世主」ではなく、「不気味なダークホース」であった。
あるいは熱心な北斗の拳読者であれば、あの拳王を思い浮かべたかも知れない。
これが高円寺の救世主となるか、災厄をもたらす者となるかはわからない。と、わたくしは思った。
ただ今は、三平ストアで間違って買ったノンアルコールビールを飲みながら静かに高円寺の平穏を祈り、この筆を置くことにしよう。

…まあ、おおむねそんな感じの夢を見て目を覚ましたわたくしの横には、空になった三平弁当の空き箱。
あー、よく寝た。
もう、食欲の秋ですね。

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399円ではなく398円という、絶妙な価格設定。300円戦争のダークホース。

RIMG4153.jpg
ふたを開けた状態でリアルに見てみるとわかるのだけれど、おかずの種類とボリュームが半端ない。
味はともかく、この破壊力で300円台は革命である。



【特別付録】『高円寺300円弁当戦争』に参戦する列強たち

福来門』:味と駅近な立地で勝負を挑む、高円寺南の雄。
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アクセスが良い。見た目が良い。何といっても、味が良い。
3拍子揃った、新規参入連合のリーダー的存在。
価格は各350円と無難な線をキープ。

明月房』:地味ながらも安定感のある味で新規参入連合を支える、エトアール通りの参謀。
RIMG4516.jpg
列強の中ではやや地味な存在ながらも、安定感のある味を提供する明月房。
写真の350円弁当以外に、チャーハン弁当400円と言うハイエンドラインも用意している。
あえて300円戦争から一歩身を引く姿勢を見せているあたり、知略に長けた策士ぶりがうかがえる。

成都』:300円戦争を価格面でリードする新興勢力。
RIMG4556.jpg
弁当にしては若干味付けが弱い気がするが、300円丁度というぎりぎりの価格設定は他の追随を許さない。
多店舗展開のスケールメリットを生かした大胆な戦略でパワーバランスの転覆を狙う。

ロンちゃん弁当』:この戦争の発端ともなった、ガード下の静かなる帝国。

豚カツ、鶏カラ、卵とじ。この布陣で350円はやはり敬意に値する。
弁当専門店としての意地、老舗のプライドだけではない実力が垣間見える職人の帝国。
この存在によって我々が育ってきたことを、忘れてはならない。

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