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発作的タイ旅行記【7】

太陽が高い。
昼食後、再び船に乗り込み、今度はタル島近くの岩礁近辺でダイブ。海底10メートルぐらいのところを1時間ほど。
サメット島に帰った後、ダイブハウスでログブックをつけてダ・フイと握手を交わし、北欧カップル、フレンチ親子と別れる。

hossathai37.jpg
■浜辺の猫。

砂浜からほど近いログハウスにチェックイン(500B)し、シンハー2本とカポーティの小説を持ってビーチに出る。
やわらかな白浜にのんびりと寝そべって本を読んでいると、地上をすべって来る穏やかな風がまことに心地よい。Tシャツを脱いで、ビールをちびちびやりながらページを繰る。「遠い声 遠い部屋」を読むのは二度目だけれど、やはり面白い。周囲を取り囲むのどかな午後とはまったく雰囲気を異にする、ゴシック調の文体にしばし耽溺。なんでビーチでそんな小説を読むんだと言われてもしょうがない。ちょっと離れたあたりに白人のカップルが座っていて、キスをしたり抱き合ったりしているが、まあ人の過ごし方は様々である。
久しぶりのダイブのせいか、水圧にも似た、体を包み込むような淡い疲労を覚えて本を伏せる。
体を起こしてあたりを見回すと、年のころは中学生ぐらいだろうか、ビキニを着た華奢な体つきをした白人の女の子が、先ほどのカップルのまわりをうろうろと歩いている。逆立ちをしたり、小さく砂を蹴ったりするかと思えば、時折立ち止まって地面にしゃがみこんだりと、なんだか動きがぎこちない。おそらくはカップルどちらかの妹なのだろう。ちょっとつまらなそうに口を尖らせている。カップルは彼女にはおかまいなしで二人の世界に浸っており、なんとなく同情してしまう。こんな気持ちのいい砂浜でつまらない気持ちになるなんて、ちょっとした人生の損失じゃないか。
彼女はカップルの周りを同心円状に移動しながら、相変わらず立ったり座ったりを繰り返している。何かを拾っては右手の中に集めているようで、最初は貝殻でも集めているのかと思ったが、僕らのいる場所は波打ち際から少しはなれた場所にあり、あたりには拾うような貝殻や珊瑚のかけらも見当たらない。
やがてカップルを中心とした彼女の惑星起動は拡大し、僕の近くまでやってきた。砂を蹴り、また何かを拾い上げる。よく見ると、それは観光客に捨てられたビールのキャップであった。どうやら砂浜の細かなごみを拾い集めているようである。

hossathai38.jpg
■宝箱。

彼女がすぐそばまで来ると、思わず「えらいね」と声をかける。彼女は相変わらずつまらなそうな顔をして地面を見つめたまま、「だって、こんなにきれいな砂浜なのに」とふてくされたように言う。近くで見てみると、驚くほど端正な顔立ちをしている。彼女は僕の足元に置いてあった缶を指差し、「それ、空いてる?」と聞く。「うん、あいてるよ」と答えると、彼女はそれを取り上げて、右手いっぱいに握っていたごみを、まるで宝物でも収めるように、缶の中に一つずつ押し込み始めた。手の中に握っていたものを見せてもらうと、そこにはタバコの吸殻や小さなキャンディーの包み、よくわからない商品の値札。小さな手のひらが、タバコの灰で黒く汚れている。
すべてを缶の中に押し込み終えると、彼女は満足したように海の方をながめて、「ほんときれいな海だよね」とつぶやいた。先ほど「こんな気持ちのいい砂浜でつまらない気持ちでいるなんて」などととほざいたが、前言撤回。彼女は彼女なりに、あるいはこのビーチにいるだれよりも、この白浜の価値と存在意義を理解しているのである。缶を持って立ち去ろうとする彼女に、何ともいいがたい気持ちで「ありがとう」と声をかける。彼女は手に持った缶を掲げて振り向き、先ほどまでのつまらなそうな表情からは想像もできないような、とびきりの笑顔を見せて手を振った。
ありがとう。いや、缶を持ってってくれたことじゃなくね。
何の権利もないけれど、この砂浜を代表して。

夕方、むちゃくちゃ腹が減ったので、「しゃ、今日は豪遊したろ」と思い、ビーチ沿いのこぎれいなレストランへ。野菜と太麺のオイスター風味、パイナップルと豚肉の炒め物、ライスとシンハーの大瓶をたのむ。
たっぷりとした夕食の快楽に満たされながらこの日記を書いているのである。驚くようなスピードで陽が落ちてゆく。

hossathai39.jpg hossathai40.jpg hossathai41.jpg
■夜が、⇒落ちて⇒ごはん。

hossathai42.jpg
■この日記。

ビールを追加した後で、日焼けのせいであろうか、なんだか脚がかゆいなと思って手を伸ばすと、周囲一帯が妙にぼこぼこしている。
ん???
手を止めて足元を見下ろすと、そこは世界最大の蚊の空港。びっっっっしりと蚊が着陸し、再び飛び立つ気配も見せず燃料補給をしていやがるのである。
以降、日記はそっちのけで蚊退治と食事の往復に忙殺される。料理は美味いが脚はかゆい。痺れるような痛みに脚を叩きまくっていると、足元にちょっとした飛行機墓場のようなものが出来上がる。となりのテーブルでは老夫婦が食事をしているが、けっこう露出の高い格好をしているにもかかわらず、まったく足元に注意を払う気配もない。いったいどうなってんだ。
食事を終えたころにはすっかり日も落ちて、おなかも脚もぱんぱんである(あとで数えてみたら、大きなものだけで33ヶ所も刺されていた)。豪遊したつもりだったが、チェックは結局220B。東京で毎日昼食に1000円ちかく使っているのが馬鹿ばかしくなる。
ばかばか。

hossathai43.jpg
■せんぷうき。

バンガローに戻ってみると、電気をつけない室内は日本の夏の宵闇に似た雰囲気。浜辺でまたはじまったお祭り騒ぎの音が、切ないような甘さで響いてくる。
火照るような空気を冷やすものは古びた扇風機しかないが、それで十分だ。シャワーを浴びて適当にバスローブを羽織り、ぱりっと糊の利いたベッドに滑り込む。
そういえば扇風機にあたりながら眠るのなんて、もうずいぶん久しぶりの事のような気がする。あれはいつのことだっけ?
こんな風に遊びつかれて眠くなるような気持ちがしたのは、もうどれぐらい前のことだろう?
カーテン越しの開け放たれた窓の外に星が落ちてくる。
遠いお祭りの喧騒も。
ゆるやかな眠りも。
サンキュー。
【続く】

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